Top / 研究内容 / 対称形複素型実信号マザーウェーブレットとその応用

概要

時間周波数解析の手法としては短時間フーリエ変換(Short Time Fourier Transform : STFT)やウェーブレット変換(Wavelet Transform : WT)が広く知られている.STFT は一定の時間分解能,周波数分解能を持つため,窓幅の決定が難しい.それに対して,WTは,マザーウェーブレット(MW)と呼ばれる関数を拡大縮小させ,分解能を周波数に合わせて変化させるため,一度の解析で各周波数帯域に適した解析を行うことが可能である.

MWはアドミッシブル条件を満たしていればどのような関数でも良い.故にMWは多様な 種類があり,MWの特性によって解析結果は異なってくる.そのため,解析の際にはMWの特 性をよく吟味してMWを選択しなければならない.例えば未知実信号を解析する場合には,周波数領域での局在性が良好で周波数とスケールの対応付けが容易なGabor 関数を使うと良いと報告されている.ところが非定常的に現れる異常信号等を検出したい場合には,Gabor 関数では十分な結果を得られない場合があり,その他のMWから選択しなければならなず,これは前述のように容易ではない.

そこで,MWを実信号から構成し,実信号の特性と同じ特性を持つMWを構成することで, 非定常信号でも有用な結果を得る事ができる.このようにして構成されたMWを実信号マザーウェーブレット(Real signal Mother Wavelet : RMW)と呼ぶ.RMWが特徴成分の抽出に有効であることが,今までの研究で明らかにされている.また,RMWは実部しか持たないために解析結果が振動的になる問題がある.これは,章らの研究による複素型RMW(Complex type Real signal Mother Wavelet : CRMW) によって改善されている.しかし,RMW は実 信号のどの部分をRMWとすべきか明確でない場合には,RMWを構成することが難しくなる. STFT やGabor 関数を用いたWTを用いる事で候補を上げることができても,1つに絞り込む 事は困難である.

そこで本研究では,複数の実信号から1つの平均的なRMWを構成する手法を提案した.こ れは,複数の信号を時系列で連続して並べ,それを1 つの信号とみなしてRMW に変換する ものである.この手法で構成されたRMWは,平均的な周波数特性を持つことができた.しか し,従来のCRMWでこの手法を適用しても,時間軸では複数の信号が並んでいるに過ぎず,真に平均的な特性が得られているとは言い難かった.そこで,対称形複素型RMW(Symmetric Complex type Real signal Mother Wavelet : SCRMW)を提案した.これは,CRMW の位相 が全周波数領域で0 になるようにしたものである.これにより,CRMW と全く同じ周波数特 性を持ちながら,時間軸では対称性を持ったMWを構成する事ができた.また,提案した手法の有効性を検討するため,脳波解析を行った.使用した脳波は,痴呆患者,てんかん患者の脳波である.脳波解析によって,提案手法の有効性が確認できた.

対称形複素型実信号マザーウェーブレット(SCRMW)

scrmw.PNG

SCRMWは従来のRMWと比較して以下の特徴を持つ.

  • エネルギーが0付近に集中している
  • 位相情報は全て0にしているため,周波数情報のみに注目できる

発表実績

  1. SICE2005,Hiroki Ikeuchi, Zhang Zhong, Satoshi Horihata, Tetsuo Miyake, "Instantaneous Correlation Analysis by Complex Type Real Signal Mother Wavelet of EEG "
  2. Complex Medical Engneering - CME2005 ,Hiroki Ikeuchi,Zhang Zhong, Satoshi Horihata, Tetsuo Miyake, "Detection of Abnormal Signal by Real Signal Wavelet Transform of EEG"
  3. 平成17年電子情報通信学会総合大会,◎池内宏樹・堀畑 聡・章 忠・三宅哲夫(豊橋技科大),"複素型実信号マザーウェーブレットと脳波解析への応用"

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Last-modified: 2019-08-01 (木) 17:07:08 (1059d)